【ビジネス英語の勉強方法5選】英語力を強みにしよう

ビジネスの現場でどのような英語人材が求められているかご存じでしょうか。
「英語を私の売りにしたいけどどうすればいい?」
「ビジネスレベルの英語力が条件になっている求人って英語の“どんな”力が必要?」
「実際の仕事で英語力を強みにして活躍できる?」

こんな風に思っていませんか? 

自分では英語力を武器にしたい!と思っていても、現場から求められているスキルを理解しないままだと独りよがりになってカラ回りしてしまいます。就活、転職、派遣先探し、キャリアアップ、定年後、、どのような局面でも、何が必要とされているのかを知らずにいるとせっかく英語力を強みにして仕事に生かそうとしても採用されないとか、採用されても満足度が低かったりキャリア形成につながらなかったり、といったアンマッチを起こしてしまうリスクがあります。

私は今までIT業界や製造業界のグローバル企業で事業企画、新規ビジネス計画、生産管理、内部監査などの部門で20年以上にわたって課長、部長を経験し、その間に私のチームに何人もの「英語ができる人材」を募集し、採用してきました。中には得意なはずの英語力をうまく生かしてもらえなかったケースもありましたが、うまくかみ合う人に出会えた成功ケースには共通点がありました。

結論から言うと、英語力のある人とビジネス現場とのマッチング成功のカギは、読者目線で正確に伝わる文書が書けることです。

そこでこの記事では、読者目線で正確に伝わる英語を書くとはどういうことか、そのためにどうすればいいのか、を解説します。まず敵を知れ、という言葉があります。就職であれ転職であれキャリアアップであれ、ビジネス現場の側が何を求めているかを知れば、英語力を生かすために何をすべきかが見えてきます。ぜひこの記事で紹介する内容を参考にスキルアップの目標を定めて、英語力を生かしたビジネスキャリアを形成してください。

なおこの記事では、仕事で書くメールや報告書やプレゼン資料などをまとめて文書と呼び、それを読む相手のことを読者と呼びます。

「英語が生かせる仕事」と「英語を生かせる人」

求人情報を扱う企業が2021年に行った調査によると、英語を使う仕事のうち最も多い業種(職種)は「事務・管理部門」です。

  [参照]神田外語学院のサイト https://www.kandagaigo.ac.jp/kifl/contents/jobs-that-utilize-english

事務・管理系部門の仕事では“モノを書く”ことが多く、“書いたもの”が非常に大事になります。そして書いたものには必ず想定している読者がいます。会話は無意識のうちに話がそれたり意図的に論点をぼやかしたりすることもありますが、文書は読者に何かを正確に伝える意図をもって書かれ、カタチとして残ります。逆に言うと会話と違ってごまかしが効きません。事務・管理系部門の仕事で英語力を生かすために求められる大切なスキルは、文書で何かを伝えられること、それだけでなく読者目線に立って誤解のないように正確に伝えられること、に尽きます。そのために、この記事でおすすめする方法をぜひ試してみてください。そうすれば、あなたの英語力のクオリティを単なる「得意」から「差別化スキル」にレベルアップさせることができ、その高いレベルでのパフォーマンスを安定して発揮できればそれがセルフブランディングとなって、あなたはビジネスの現場から求められ続ける人材になるでしょう。

読者目線で書くとは

さて、読者目線で正確に伝わる文書を書く、とはどういうことでしょうか。それを考えてみた例をひとつ挙げます。

以下に登場するM君は私の部下になって1年。30代前半の元気な青年です。辛い食べ物が大好き。趣味は映画観賞で家にあるテレビは85インチ。TOEICは850点。Excelを駆使したデータ分析が得意です。さらにこれからは英語でも対応できる仕事力を武器にしてキャリアアップを目指しています。

この数ヶ月、M君は会社の購買部門の業務が適切に行われているかどうかをチェックする監査に取り組んでいました。私も一緒に、購買部門の人に協力してもらって書類を調べたり購買システムを覗いたり購買部員にインタビューしたりしてきました。その結果の報告書を、先週は日本語で作成し、今週は英語版を作成しています。M君が英語版のドラフトを私にメールして、声をかけてくれました。

M君
監査報告書の英語版を作成して送りました。確認お願いします!
たっきー部長
はい、いつも早いですね、ありがとう。 … えーと、この“Applicant”というのは何のこと?
M君
え、何のことって、申請者のことですよ。日本語版のほうで部長もOKだったじゃないですか~

なるほど。でもここで私はちょっと引っかかります。

たしかに私は、M君がまず日本語で作成した報告書をレビューしました。日本語版に申請者という言葉がありましたが、そのときは引っかからなかったのでサラッと流しました。私もここ数か月M君と一緒に購買業務のことを調べてきたので、購買部門の経験はありませんがだいぶ購買プロセスの細かいところまで詳しくなっていました。なので、この場合の申請者というのが「購買システムで発注する人」であることを1、2秒で思い出すことができました。

ここで、この監査報告書の読者のことを思い浮かべましょう。読者は私の上司である社長です。社長は外国人なので英語だけで読みます。また、あまり現場のプロセスには詳しくないです。そういう人が「Applicant」という英語を見たら、まずは普通に辞書の一番上に出てくる意味である「志願者」とか「応募者」といった意味が頭に浮かぶはずです。もちろん社長は頭脳明晰でカンのいい人だから、購買の話をしている文脈からこれが発注依頼をする人であることは間もなくわかるだろうけれど、それでも数秒かかるかもしれない。300人の社員をまとめる社長という立場では、一日に何十通ものメールや報告書を見て即座に判断したり決裁することを要求されます。ビジネスの現場では、忙しい社長の数秒もムダにすることなく見た瞬間にわかる言葉で伝えたい、という読者目線に立つべきなのです。

この数か月に購買業務の細かいところまで調べてきた私でも一瞬引っかかる言葉は、社長にすぐには伝わらないかもしれない、という直感を信じて、ここの英訳を何とかしたいと思うわけです。

たっきー部長
そうだM君、購買システムの英語版を見てみましょう

。。。一緒に購買システムを立ち上げて言語を英語版に切り替えて見てみると、日本語では「申請者」となっている箇所が英語版のシステムでは「Requestor」となっています。

M君は、「しまった!」という顔をします。

M君
すみません💦 英語版システムは見てませんでした。ChatGPTでも辞書でも「申請者」は「Applicant」となっていたのでそのままApplicantにしてしまいました。。。 至急、“Requestor”に修正します!

そうですね。実際にシステムで使われている言葉を使えばまずは間違いないでしょう。

でも私は、ここでもう一歩進めて“Purchase Requestor”にしてはどうかと思いました。社長にとっては購買システムで使われている通りの用語かどうかは関係なく、この報告書だけを見て瞬時に理解できることが大事なのです。そこを踏まえて、わざわざ“Purchase”の一語を加えておけば、これが購買業務監査の報告書であることを思い出してもらうまでもなく、そして購買システムを見たことがなくても、「購入を依頼する人」であることが迷うことなくわかるでしょう。

ただし、“Purchase”の一語を補うのを冗長と見るか瞬時の判断に役立つと見るかは、文字にしたときの見た目や、前後の文章とのバランスなども合わせて検討することになります。

たっきー部長
資料のスペースの関係もあるので無理しなくていいけど、文字数的に書けるようならPurchase Requestorにしておきましょう
M君
たしかにそのほうが一発で伝わりますね、わかりました!

ちなみにM君は、普段からChatGPTとDeepL翻訳を駆使して、そのうえで自分でもチェックして適宜手直ししてクオリティの高い英語文書をスピーディに作成するので、たいていの場合は任せて安心です。ですが監査報告書のように重要で、正確にかつ素早く読み取ってもらいたい文書には特に、生成AIだけでは対応できない読者目線のひと工夫が求められます。

ところで、読者目線で正確に伝わるように書いていると、英語版での気づきを日本語版のほうにも反映して直したくなる場合も出てくると思います。そのような場合、日本語版はいちど部長承認を得たのでいじらない。。。などとこだわることなく、ぜひ読者目線に立ち返って日本語版のほうも直しましょう。それもまた、あなたの仕事のクオリティを高めることになります。これらはすべて読者のことを思い浮かべて想像力を働かせる心配りでもありますが、意識して訓練すれば向上できるスキルでもあります。労力を惜しまずにクオリティを高めていつも正確に伝わる文書を書いてくれる人を現場は求めています。

なお上の例では、社長以外の読者はほとんど日本人で、かつ購買業務もシステムについても知っているだろうと思われる人ばかりだったので、日本語版のほうで「申請者」を「発注依頼者」などに直すことは特にしませんでした。

ビジネス英語の勉強方法5選

さて、英語をビジネスの現場で生かそうとする人はどのように練習するのが効果的でしょうか。ここでは5つ挙げます。

●読者の立場、バックグラウンド、英語理解レベルなどを想像して表現を工夫する
●客観的に眺めて自分でも「引っかかる」箇所を見つけたら理解を助ける言葉を補う
●ChatGPTやオンライン辞書を駆使する(でもそれだけでは不足)
●英語資格を目指す
●スクールに通ってモチベーションアップ・スキルアップする(ビジネス英語ライティングに力点を置いて)

少し補足すると以下のような感じです。

  • 読者の立場、バックグラウンド、英語理解レベルなどを想像して表現を工夫する
    • 読者がその文書を読んでいるところを想像するといいでしょう。社長のような忙しい読者は飛ばし読みするかもしれません。なので文書の最初の方は特に注意して平易に意訳する、言葉を補うなどの工夫をしましょう。
  • 客観的に眺めて自分でも「引っかかる」箇所を見つけたら理解を助ける言葉を補う
    • 自分では自分が書いたものの良し悪しがなかなかわからないものです。全ての言葉をやる必要はないし時間もありませんが、読み直してちょっとでも引っかかる箇所があれば読者にも伝わりにくいはず、という自分の感性を信じて表現を工夫しましょう。工夫するには、面倒がらずに日本語→英語、英語→日本語の両方向で辞書で調べ、生成AIに訳させるなど試みましょう。両方向で調べるとニュアンスの違いがあることに気づく場合が多いです。そして、M君の例で挙げた「申請者」を「Purchase Requestor」にしてみるなどのカスタマイズを加えて少しでも伝わりやすくしましょう。
  • ChatGPTやオンライン辞書を駆使する
    • もちろん有効です。でも生成AIもオンライン辞書も読者のことを知りません。M君の例のように読者目線でのひと工夫を加えましょう。その努力を惜しまないことで文書のクオリティとあなたのセルフブランディングは格段に高まります。
  • 英語資格を目指す
    • 目標があると努力を継続しやすいですね。英語資格には色々ありますが、ビジネスで英語を生かす人にとってもっともわかりやすいのはTOEICです。800点ない人は、800点以上を目指しましょう。
  • スクールに通ってモチベーションアップ・スキルアップする
    • スクールに通ったほうがモチベーションアップになる人はスクールに通うのもいいでしょう。その場合、安易に英会話スクールに通うのではなく、行くならビジネス英語ライティングのスキルアップに定評のあるスクールにしましょう。添削を受けられる、できれば自分の分野に近いビジネス経験のある講師がいるなどの条件で探すといいでしょう。

ビジネスの現場が求める英語力人材とは

 

そのほかにも、英語力を強みにするうえで大切なことがあります。

確かな英語力は、確かな日本語力の上にあります

要領を得ない日本語を書く人が英語になると急にスッキリとわかりやすいものを書けるはずはありません。日本語で文書を書くときも気を抜かずクオリティを高めるように日頃から注意しましょう。ビジネスの現場では、あなたが日本語で書いたものも周りからよく見られています。

履歴書・職務経歴書にぜひ書いていただきたいこと

もし就職、転職などで英語力をアピールしたいときは、資格やTOEICの点数などに加えて、実践力がわかることも書いてください。たとえば:

  • 普段どの程度の頻度・深さで英語を使っているか(毎日〇通程度、「…」といった内容の英文メールを書いている、等
  • 英語の報告書やプレゼン資料などの作成にどの程度関わっているか(「…」といった内容の報告書やプレゼン資料を英語で作成している、等
  • 英語力と合わせることで武器になる英語以外のスキル。就業経験のある人であればできるだけ具体的に(たとえばデータ分析や会計システムの何ができるのか、等)

英会話力

英語でのリスニング、スピーキングの力は、もちろんあったほうがいいです。業種・職種によっては英会話力が必須になるでしょう。しかし、この記事で扱っているような事務・管理系のビジネスの現場では英会話力はそれほど大きな差別化ファクターにはなりません。ある程度英会話コミュニケーションができる人はどこの職場にもそこそこいるからです。もちろん、あなたがビジネスを牽引して海外の取引先との交渉を中心的に担う立場になるのであれば高度な英会話力は大きなメリット、それどころか不可欠でしょう。ですが多くの場合は、流暢な英会話力は必ずしも求められるスキルの最優先ではないのです。(繰り返しですが、あったほうがもちろん望ましい能力ですので、将来を意識して英会話力も高めていくのはすばらしいことです!)

自分の“軸”

英語を使って何をしたいかを明確にすることは大切です。もしいま現在それが明確になっていなくてもかまいませんが、少なくとも数年先には明確にしましょう。事務・管理系部門で英語をツールとして使いこなしながらビジネス現場で生かしていく場合、すでに会計、法務、人事、監査、IR、購買、IT、、、などの分野の勉強をしたり資格を取得している人は、専門領域に英語力をプラスすることにより相乗効果のキャリアアップを図れるでしょう。逆にまだ専門分野がない人でも、英語力を武器にして事務・管理系部門でキャリア形成を目指すうちに、好きな分野・得意な領域といったものが自ずと見えてくるはずです。そうなったときに、英語力にプラスして仕事の軸を定めていきましょう。

まとめ

以上、ビジネスの現場から見た英語力を生かせる人とはどういう人か、そしてビジネス英語の勉強方法という観点で紹介してきました。

実際には、業種・職種により、求められるスキルレベルはさまざまだと思います。実践で何が役立つか、実際に仕事を開始してみてはじめてわかることも多いでしょう。ですが全般にあてはまること、あるいは心構えといってもいいかもしれませんが、それは以下のようなことだと思います。

  • 英語はコミュニケーションのツールであって目的ではありません。それをわかったうえで英語力を強みにしてブラッシュアップすればビジネスの現場で強力な武器になります。
  • ビジネスの現場で求められるのは、読者に正確に伝わる文書を書く能力です。そのスキルは長い目で見てあなたの英語力、さらには仕事力をも強く差別化しセルフブランディングにつながります。
  • 正確に伝わる文書を書くためにつねに読者目線を持つことが有効です。読者のことを思う想像力、サービス精神と言ってもいいかもしれません。
  • ぜひこの記事でご紹介した5つの方法を参考にして、ダイナミックなビジネスに飛び込んで英語力を武器に息の長いキャリアを形成してください。